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最高裁判所第一小法廷 昭和24年(れ)1997号 判決 1949年12月15日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人水戸野百治上告趣意第一点について。

所論は、刑の量定甚だしく不当なりと主張するものであるから、上告適法の理由として採ることができない。

同第二点について。

しかし、原判決は、所論昭和二二年一一月二八日頃收受した本件賄賂は既に被告人において費消した旨判示しており、そして、同年一二月中被告人がこれを飲食費等に消費した事実は記録上明白である。從って被告人はその賄賂を費消すると共にその利益を享受し終り最早これを没收することができなくなったものといわれなければならない。されば、被告人がその後約一箇年を経た同二三年一二月二〇日頃同額の金円を贈賄者に返還したとしても、その返還は賄賂そのものの返還ではないから、收賄者において既に享受した利益を国庫から追徴される責を免れることは許されないものといわねばならぬ、所論判例は賄賂そのものが贈賄者に返還され、從って国庫がこれを贈賄者から没收又は追徴し得る案件に関し、本件には適切でない。それ故所論は採ることができない。

よって旧刑訴四四六條に從い主文のとおり判決する。

この判決は裁判官全員の一致した意見である。

(裁判長裁判官 齋藤悠輔 裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 岩松三郎)

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